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ワーキングプア(年収200万円以下)層の生活・意識調査 『連合調べ』

 近年、日本では年収200万円以下のいわゆるワーキングプア層が急増しています。その数は既に1000万人を超え、労働者の5人に1人がワーキングプアにあたる状況に陥っています。現在、国の中央最低賃金審議会では、今年度の最低賃金改定の目安に関する議論が行われており、連合は、最低賃金の全国最低額(現在642円)を早期に800円まで引き上げるべきだと主張しています。日本の最低賃金は世界的に見ても低い水準にありますが、経営側委員は最低賃金の引き上げが企業の経営を圧迫しかねない、雇用が失われるなどと主張しています。しかし、最低限の賃金が保障されなければ、個人消費は回復せず、結果的には企業業績も伸びないという悪循環からいつまでも脱却できません。

 このため、今回、連合(日本労働組合総連合会)(http://www.jtuc-rengo.or.jp)(所在地:東京都千代田区、会長:古賀 伸明)では、ワーキングプア層の生活意識・実態を通し、改めて社会的に最低賃金の在り方を考える契機となるよう、本調査を実施しました。

 本調査は、モバイルリサーチ(携帯電話によるインターネットリサーチ)により、2011年06月28日~07月08日の11日間において実施し、1000名(調査対象者:個人年収が200万円以下で、家計の1割以上を負担している20歳~59歳の男女)の有効サンプルを集計しました。

◆仕事の大変さ『大変』が8割、仕事の満足度『不満』が4割

 個人年収が200万円以下で、家計の1割以上を負担している20歳~59歳の男女(男性500名、女性500名、計1,000名)に、日頃の勤務状況として1週間の勤務日数、1日の勤務時間を聞いたところ、1週間の勤務日数では「週6日」19.7%、「週5日」56.6%、「週4日」11.1%となり、平均は週4.8日となり、1日の勤務時間では「5時間」11.9%、「6時間」12.8%、「7時間」14.0%、「8時間」34.5%となり、平均は7.0時間となりました。

 また、仕事に対する気持ちとして、仕事の大変さ、仕事に対する満足度を聞いたところ、仕事の大変さでは『大変(計)』は79.6%(「大変である」26.2%と「どちらかといえば大変」53.4%の合計)と8割となり、『楽(計)』は20.4%(「楽である」2.1%と「どちらかといえば楽」18.3%の合計)と2割となりました。仕事の満足度では『満足(計)』は59.4%(「満足」13.0%と「どちらかといえば満足」46.4%の合計)と6割となり、『不満(計)』は40.6%(「不満」8.4%と「どちらかといえば不満」32.2%の合計)と4割となりました。

◆自身に該当する最低賃金額を知っている 2割強

 全回答者(1,000名)に、「最低賃金制度」という制度を知っているか聞いたところ、「自身が勤める会社が守るべき最低賃金額まで知っている」は22.3%と自身に該当する最低賃金額まで知っていたのは2割強にとどまり、「自身が勤める会社が守るべき最低賃金額までは知らないが、制度があることは知っている」は61.4%で、それらを合わせた『最低賃金制度の認知率』は83.7%、「知らなかった」は16.3%となりました。

 そして、自身が勤める会社が守るべき最低賃金を知っている223名に、自分の給与を最低賃金と比較したことがあるか聞いたところ、「ある」は70.0%、「ない」は30.0%となりました。

 また、全回答者(1,000名)に、日本の最低賃金の水準「時給730円(全国平均)」についてどう思うか聞いたところ、「高い」2.4%、「妥当」25.0%、「低い」72.6%と、7割強が低いと感じていることが分かりました。

◆我慢や節約しているもの「レジャー」54.7%、「通院(診察・治療)」も20.6%
◆東日本大震災による影響 「全体的に生活が苦しくなった」17.0%

 全回答者(1,000名)に、現在の生活で我慢や節約しているものを聞いたところ、「レジャー(旅行含む)」54.7%が最も多く、次いで「外食」50.2%、「衣料品」47.0%、「家電」42.3%、「食品・飲料品」41.3%、「お洒落着」40.0%が続きました。また、医療に関わることを我慢や節約しているとの回答もあり、「通院(診察・治療)」は20.6%と2割、「医薬品」11.7%、「入院」3.9%となりました。

 男女別に見ると、「化粧品・美容用品」では男性28.0%、女性44.4%と16.4ポイント差で女性が高く、「レジャー(旅行含む)」(男性49.4%、女性60.0%)や「お洒落着」(男性35.0%、女性45.0%)でも女性の方が10ポイント以上高くなりました。

 次に、食事について聞いたところ、1日の食費(3食分)では、平均金額(加重平均)は768.2円となりました。また、普段よく食事をとる(買う)場所を聞いたところ、「自炊」が最も多く68.3%、次いで「スーパー」53.0%、「コンビニエンスストア」25.9%となりました。

 そして、東日本大震災以降、生活や仕事にどのような影響があったか聞いたところ、「全体的に生活が苦しくなった」17.0%、「労働時間を短くされた」10.3%、「自宅待機・出勤停止にされた」8.4%となりました。「とくに影響は感じない」は62.9%と6割強となりました。

◆「生活が苦しくて、ホームレスになる可能性がある」
 自分の収入のみで家計を支えている層では2割
◆現在の生活に『不満』6割弱、約4人に3人は「何とかしたいと思う」
◆ワーキングプアであると感じた経験がある 6割

 全回答者(1,000名)に、現在の生活についての実態や実感を聞いたところ、『あてはまる(計)』(「非常にあてはまる」と「ある程度あてはまる」の合計)の値を見ると、生活に関する項目では、「世の中はやはりお金だと感じている」80.1%が最も高く、次いで「収入アップは無理だと感じている」78.8%、「貯蓄は無理だと感じている」67.3%、「自分の将来に希望が持てない」63.5%が続きました。

 家計負担割合別に見ると、『自分の収入のみで家計を支えている』層では、「生活が苦しくて、ホームレスになる可能性がある」が19.7%となっており、2割があてはまると回答しました。

 社会に関する項目では、「貧困層は増加していると感じている」80.9%が最も高く、次いで「貧富格差社会の中にいると実感している」79.8%、「社会が衰退していると感じている」76.2%、「世の中の厳しさや薄情さを感じている」74.0%が続きました。また、仕事・企業に関する項目では、「仕事を失うことが怖い」71.8%が最も高く、「企業は終身雇用を目指すべきと感じている」60.0%が続きました。

 現在の生活についての実態や実感からは、仕事やお金に対する危機感を感じている様子が窺えます。

 次に、現在の生活について満足度を聞いたところ、『満足(計)』(「満足」3.7%と「どちらかといえば満足」38.4%の合計)は42.1%と4割強となり、『不満(計)』(「不満」15.2%と「どちらかといえば不満」42.7%の合計)は57.9%と6割弱となり、『不満(計)』が『満足(計)』を上回りました。

 また、現在の生活に不満(「不満」もしくは「どちらかといえば不満」)と答えた579名に、現状についてどう思うか聞いたところ、「何とかしたいと思う」74.4%、「仕方ないと思う」25.6%と、現在の生活に不満のある人の約4人に3人は何とかしたいと思っていることが分かりました。

 全回答者(1,000名)に『「ワーキングプア」とは「働く貧困層」の意味で、正社員並みに働いているが、年収200万円以下の人たちなどのことを言います。』との説明後に、自分自身がワーキングプアであると感じたことがあるか聞いたところ、「ある」は60.2%、「ない」は39.8%となり、回答者の6割がワーキングプアであると感じた経験があるという結果となりました。

◆政治に期待しているもの「景気対策」43.0%

 次に、政治に期待しているものを聞いたところ、「景気対策」が最も多く43.0%、次いで「社会保障の充実」31.3%、「減税」31.2%、「雇用の維持・拡大」30.7%、「子育て支援」18.2%が続きました。また、「政治には何も期待できない」は27.1%となりました。

 年代別に見ると、50代では「景気対策」が53.3%、「社会保障の充実」が45.7%で他の年代よりも高くなっており、30代では「子育て支援」が24.3%で他の年代より高くなりました。

◆まとめ

 今回の調査結果は非常に厳しい内容となりました。年収200万円以下の層では、今後の収入アップも見込めないと考える人が8割弱、将来に希望が持てないと考える人が6割を超え、悲観的な生活実態を表しています。

 平均の勤務状態を見ると、週4.8日、1日7時間労働という結果で、ほぼ正社員に近くあり、約8割の人が自分の仕事を「大変」と考えています。にもかかわらず、結果的にその頑張りが賃金に反映されず、ワーキングプアがいわゆる「ハード・ワーキング・プア」へと深刻化していると考えられます。

 最低賃金に関して見ると、最低賃金制度自体は8割以上の人が知っているものの、実際に自分に当てはまる最低賃金額となると、知っている人は2割程度にとどまります。こうした実際的な矛盾や疑問をどう解消すべきなのか、どこにぶつけるべきなのか、行政としても労働組合としても課題が浮き彫りになっています。

 生活感について食費で見ると、1日768.2円、3食に換算すると、1食256円程度となり、かなり切り詰めた生活であることが分かります。こうした現在の生活に不満を持つ人の4人に3人は「何とかしたい」と思っており、その声にいかに応えるのかは、格差解消に向けた大きな政治的課題です。そして同時に、連合としても「働くことを軸とする安心社会」を実現する上で、最低賃金水準の改善に取り組む必要があることを改めて認識させる調査結果となっています。

◆調査概要◆

◆調査タイトル:ワーキングプア(年収200万円以下)層の生活・意識調査
◆調査対象:ネットエイジアリサーチのモバイルモニター会員を母集団とする
 個人年収が200万円以下で、家計の1割以上を負担している20歳~59歳の男女
◆調査期間:2011年06月28日~2011年07月08日
◆調査方法:インターネット調査
◆調査地域:全国
◆有効回答数:1,000サンプル(有効回答母数から1,000サンプルを抽出)
◆実施機関:ネットエイジア株式会社
(担当:吉田)

■■連合(日本労働組合総連合会) 概要■■

組織名 :連合(日本労働組合総連合会)
代表者名 :会長 古賀 伸明
発足 :1989年11月
所在地 :東京都千代田区神田駿河台3-2-11総評会館内 3F-8F
業務内容 :すべての働く人たちのために、希望と安心の社会をつくる

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